ウッドブラインド2018.12-4
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5枚のフロストガラスを使った箱のような形のテーブル「soft」(2015)。ガラス同士の繋ぎ目の断面やガラス平面に色をプリントし、柔らかな印象に。Photo: Kenichi Sonehara81「天理駅前広場 CoFuFun」(2017)。奈良県のJR・近鉄天理駅の駅前広場整備計画。天理市内に多数点在する古墳をアイコンとし、円形の遊具やカフェを設計。 Photo: Takumi Ota2018年のミラノサローネ期間中に開催された個展「nendo : forms of movement」。日本企業の先端素材や加工技術を利用した10コレクションを展示。 Photo: Takumi Otaルイ・ヴィトンのためにデザインした照明器具「surface」(2013)。一枚の革を丸めて持ち運び、使用時にはLED光源にマグネットで固定する仕組み。 Photo: Akihiro Yoshidaありそうでなかったユニークなデザインのブラインド「ウエーブ」ですが、どのようにしてこの形状が生まれたのでしょうか。佐藤オオキさん(以下佐藤):まずブラインドの開発からスタートしたのではなく、あるオフィスのデザインのプロジェクトが最初にあり、そこで使用するものとしてブラインドを考えました。大きなテラスに面した気持ちの良い空間だったので、その気持ちよさをできる限り生かすべくシンプルに仕上げたかったんです。ただ、ブラインドは調光をはじめとした機能はとても優れていますが、空間に「かたさ」が出てしまう恐れがありました。そこで、ブラインドのスラット一枚一枚をそれぞれ異なる波状にカットし、カーテンのように柔らかい立体感を持つ「ブラインドとカーテンの中間」のような存在にすることで、空間全体に柔らかさを与えられないnendo佐藤オオキ Oki Sato1977年カナダ生まれ。2002年デザインオフィスnendo設立。建築、インテリア、プロダクト、グラフィックまで幅広くデザインを手がける。Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」(2006年)、Elle Deco International Design Award デザイナーオブザイヤー(2012年)受賞。作品はニューヨーク近代美術館(米)、ビクトリア&アルバート博物館(英)など世界の主要な美術館に収蔵されている。かと考えたんです。そうして新しくデザインしたブラインドをTOSOさんに相談して、オーダーの形でつくってもらったというのが経緯です。まず空間ありきで生まれたデザインだったのですね。実際に形になるまでは、TOSOの担当者との間で何度もやり取りがあったと聞いていますが。佐藤:最初にこちらで「こういうデザインのブラインドをつくりたい」と模型をつくって見てもらったのですが、その段階では実際に昇降させたりチルト(スラットの角度を変える)させたりするのが難しいとTOSOの開発の方から言われまして。TOSOでの試作を経て波のピッチや数などいくつか条件を出してもらい、再度設計を行いました。お話した通りオフィスのデザインがまずあって工期が決まっていたため、それに向けて結構タイトなスケジュールでやり取りを行いました。その後TOSOで製品化に向けた動きがあり、現在の「ウエーブ」の形になったと。佐藤さんは製品化にも監修として関わられたと聞いています。ウエーブは特にどのような空間で使ってほしいですか?佐藤:空間を「遮断する」ものではなく、空間と空間を緩やかに「繋げる」ものとして使ってもらえると嬉しいです。ただ、選択肢がどんどん増えている時代ですから、つくり手から「こう使ってほしい、こうすれば効果的」と絞り込まずに余白を残すことが大事だと考えています。僕にとって、デザインやものづくりの中心は常に人。いろいろな分野から多角的にその人の人生を豊かにするお手伝いができればいいと思っています。カーテンのようなブラインドをつくりたかった

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